スポーツカーなどによく使用されるバケットシート。
レカロ社で製造・販売しているバケットシートは、通称「レカロシート」と呼ばれています。こうしたバケットシートはレカロ社に限らず、さまざまなメーカーから販売されていますが、これらを装着した車は車検に通るのでしょうか?
車に本来装着されているシートと交換可能な、こうしたシート類を「社外シート」と言います。基本的にレカロ、ブリッド、スパルコなどのメーカーで製造している社外シートは車検に通ります。
ただし、シート本体やシートレールの強度・素材の証明書類が必要になるかもしれません。
バケットシートは、身体をしっかり固定してスポーツ走行をするのにうってつけのアイテムです。しかし、それを装着したことで車検に落ちては意味がありません。
『RECARO』の文字がよく目立つので、純正のスポーツシートとして採用されている車種も多いので名前だけでも聞いた事がある方も多いバケットシートですよね。
メイド・イン・愛知のBRIDE!最近では人気のMFゴーストとのコラボシートなんかもありますよね。
映画 FAST&FURIOUS(ワイルドスピード)でもお馴染みのSPARCO。ブライアン・オコナ―ことポール・ウォーカーの狩る日本車にはよく装備していたので映画ファンはご存じの方も多いかと思います。
このバケットシートですが、実は車検に通すためには条件があるんです。
バケットシートとは
通常のシートよりも身体全体を包むような形でホールド力があり、主にレーシングカーなどに使用されているシートになります。
『バケット』とは?〜Wikipediaより〜
「バケットシートとは、「バケツ形の座席」という意味で、左右の「へり」を高め、尻や肩を深く包むことで体の固定機能を高めた形状のものを指す。
座面が平面で構成されるベンチシートと対比される用語である。」
形や座り心地で近しいものとして、ゲーミングチェアがあります。
そしてバケットシートは大きく分けてフルバケットシート(通称フルバケ)とセミバケットシート(通称セミバケ)の2タイプがあります。
フルバケットシート
フルバケットシートは、座った人の体を包み支える機能性に特化したものとなっています。ホールド力が高いことから競技用シートとして捉えられることが多く、一般の乗用車に使用するとそのままでは車検に通らないことも多いです。
特にフルバケットシートで注意しなければならないのは、道路運送車両法の保安基準のうち第22条の内容です。これによると、シートの後面部分は、衝突などの事故に遭った際に座っている人を衝撃から守る構造でなければならないと記されています。
しかし、競技用のフルバケットシートはカーボンなど骨格部分がむき出しであるなどの理由でこの基準を満たさないこともあり、車検に通らないこともあります。この場合、後部座席に乗っている人の安全が問題になることもあります。
サーキット専用の車両なら、性能重視でフルバケットシートを使うことが可能です。しかし、一般の乗用車への装着は保安基準に照らし合わせながら慎重に行う必要があります。
セミバケットシート
セミバケットシートは、フルバケットシートよりもホールド力が低く、リクライニング機能がついているのが特徴的です。特にリクライニング機能は保安基準にも関わってくるので、セミバケットシートは車検にも通りやすくなっています。
もちろんホールド力が低いと言っても、一般的な乗用車のシートと比べれば、包み込んで支える機能は高いです。そのため、車検に通りやすいと同時にバケットシートならではの座り心地と安定感を併せ持っていると言えます。
セミバケットシートを装着して車検に出す場合は、保安基準に適合しており、安全面でしっかりしたものをつけましょう。座る人の体型や車種に合わせて、快適に使用できるものを選ぶのがポイントです。
車検の基準は道路運送車両法の保安基準
ここまでバケットシートについて詳しく説明してきましたが、車検時の基準と照らし合わせた場合、バケットシートはどんな点が問題になりやすいのでしょうか?
まずは、車検がどんな基準に基づいて行われているのか説明していきます。
車検の検査で基準となるのは、道路運送車両法で定められている保安基準です。
これは、車の走行時の安全を確保することと、また環境保全を目的として設けられており、車検はこれに基づいて行われます。
車検の現場では、車の車高や全高などのサイズ、部品の装着の仕方、それらの動作、そして排ガスなどが全て基準に適合しているかどうかをチェックします。
これらのうち、ひとつでも適合しなければ不合格となり、いわゆる「車検に落ちる」「車検に通らない」といった事態になります。
車検に通らない原因としてよくあるのが不正改造です。例えば、マフラーを取り付けたことで騒音の上限を超えてしまった場合やフロントガラスに貼ったフィルムの可視光線透過率に問題があったりした場合は不正改造になります。
車検に落ちるようなバケットシートの取り付け方をしていると不正改造になってしまいます。その具体的な内容を次で説明します。
車検時には強度証明書が必要?
このバケットシートですが、実は車検に通らない可能性もあります。
車検に通るか通らないかのポイントは、保安基準に適合した安全性を確保しているかどうか?です。
特にフルバケットシートの場合には、後部座席からの降車問題・リクライニング機能がない・車両の構造変更などから厳しくチェックされ、安全性が認められなければ車検に通す事ができません。
この事に関して「え?知らなかったんだけど!」「昔はレカロ車検通ったのになんで?」となる方もおられるので、使用されている方も多いレカロ社での車検時の注意点をご説明していきましょう。
保安基準適合試験成績書(強度証明書類)
レカロシート装着の場合、シートとシートレールが適合していないと車検には通らないのですが、この際に確認として必要になるのが『保安基準適合試験成績書(強度証明書類)』になります。
こちらはオーナーさん自身での申請が必要であり、申請時にはシート・レールそれぞれの保証書・製造番号と車両情報(車検証)が必要となります。
シートとシートレールそれぞれでメーカーが異なったり、正規品でない場合には車検NGとなります。
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また、申請した書類はオーナーさんの元ではなく、車検を受けるディーラー・車検工場へ送られますのでご注意ください。
いつから必要になった?
実はH29年7月に道路交通法の一部改定により、バケットシート装着の場合の保安基準が厳しくなりました。
しかし、特に販売店から告知される訳でもないので「知らなかった!」という方もおられるようです。
その為、H29年7月以前は特に何事もなく車検を通せたのに、改定後にその事を知らず通せなくなっていて「え?なんで?」と慌てたという声もあります。
強度証明書以外にはどんな基準がある?
①シートとシートレールのメーカーが同一でない
シートとシートレールは自動車の構造上ワンセットです。しかし両者のメーカーが異なっていたり、いずれかが非正規品やコピー品だったりした場合は基本的に車検には通りません。
そのため、レカロシートを装着している場合は、レカロ社製のシートレールを使うのがベストです。
また、レカロ社以外のメーカーで製造しているシートレールにも車検に対応しているものがあるので、それを使ってもいいでしょう。
ただし、レカロシートと異なるメーカーのシートレールをワンセットにして車検に通すには、少なくともシートは正規品である必要があります。こうしたシートレールは、メーカーから保安基準適合試験成績書(強度証明書類)を取り寄せることも可能です。
ブリッドの商品は一部の競技専用モデルを除き、保安基準適合品=車検対応品となっております。
以下BRIDEのHPより
保安基準成績一覧表および製品保証書の再発行はできません。全国の陸運局(運輸局・支局)、軽自動車検査協会には、弊社製品の保安基準適合証明書類を提出しておりますが、書類の提出を求められる場合は販売店もしくはブリッド株式会社までご相談ください。
車検場への提出書類には、車検予定日、車両所有者名、車両名・型式、ナンバー、シートのモデル名・品番、シートレールの品番などが必要となります。必要事項を確認後、車検場または車検持込業者様へFAX送信させていただきます。
スパルコでは基本的に基準外のシートが多いので道路運送車両の保安基準に準拠する日本向けモデルの購入をおススメ致します。
以下SPARCOのHPより
●当社評価により道路運送車両の保安基準/「 U N / E C E 規則」/審査事務規定に基づく座席および座席取付装置の技術基準への準拠が確認された座席(シート)および座席取付装置(シートレール)です。
●シート、シートレールは必ず同時に購入し、セットでお使いください。
●R100J以外のシートまたは他社製シートレールとの組合せは当社評価の対象外です。
適合車種順次拡大中とのことです。
②リクライニング機能がない
道路運送車両の保安基準では、乗っている人が乗り降りするために必要な幅は「600mm」と定められています。
ここで問題になるのは後部座席の乗り降りで、スムーズな乗降が可能な4ドア車と違って、2ドア車は「600mm」の幅の確保に注意しなければなりません。
2ドア車で乗車定員が3人以上の場合、運転席と助手席のシートにリクライニング機能が備わっていないと、スムーズな乗降のための600mm幅の確保ができなくなります。フルバケットシートは保安基準を満たさず、車検に通らないということです。
フルバケットシートを装着して車検に通したい場合は、後部座席を取り払う必要があります。その上で構造変更の申請をするといいでしょう。
③シートの背中が保護されていない
シートの背面が、カーボン、FRPなどからなるシェル素材がむき出しのものは、万が一の衝突時に後部座席の乗員に危険が及ぶ恐れがあります。
道路運送車両法の保安基準上、この点での安全を確保しなければなりません。
このような、シートの背面がむき出しになっているタイプのバケットシートは、車検対策として専用のシートバックプロテクターを装着することで車検対策となります。
オプション装備品としてシートメーカーで販売しているので、確認してみてください。
ただし、これも不要な場合があります。2シーターの車で後部座席がなかったり、あるいは後部座席そのものを取り外して構造変更の手続きを行っていたりすれば、プロテクターを装着する必要はありません。
④3点シートベルトが使われていない
車をサーキット仕様にしたい方は、バケットシートに加えて4点式シートベルトを装着したいと考えるかもしれません。
4点式シートベルトは、シートに体が強く固定されるのが特徴で、サーキットドライビングでは必須アイテムです。
しかし、一般道では純正の3点式を使うのがルールです。4点式は、確かにサーキットでは使用が義務化されているほどメジャーですが、普通の乗用車では保安基準を満たさないことになります。
保安基準上、シートベルトには自動巻き取り装置が必須で、上半身を簡単に動かせることが条件となっています。この点がサーキットとは基準が逆で、運転時に体の自由が利かないと、後退する時の後方確認に支障をきたすのです。
「これってどうなんだろう?」と疑問に感じる場合には、事前に車検専門店などの整備士さんに相談・チェックしてもらう事をおすすめします!
ただし、足元を見て悪質にボッてくるお店の報告例も多々あるので注意しましょう。
当社は大丈夫ですよ(笑)
保安基準を守って安心・安全なカーライフを!
走行中の車が別の車や障害物などに衝突すると何トン分かに相当する重力がかかるため、シートの強度や安全性に問題があれば当然、死傷する可能性が高まります。
厳しいと思ってしまいがちなバケットシートの保安基準も全て、乗員の命を守るためにあることを念頭に置いておいてくださいね。
バケットシートはルールに従って装着したものであれば問題なく車検に通ります。
車に装着する段階で、車検に通るかどうかを専門家に確認してもらうのが一番いい方法です。
バケットシートを装着されているお車で、「車検に合格するか不安…」と感じた方もお気軽にオートモール水戸にお問い合わせください!
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もちろんバケットシートの発注や取付もお気軽にご相談ください。
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